フリーランス(個人事業主)が「いくら得するの?」「何から始めればいい?」に即答できるよう、iDeCoと小規模企業共済の仕組み・節税効果・始め方を網羅しました。
さらに課税所得の動きと適用税率が見えるシミュレーション、社会保険料の考え方、そして法人化(合同会社)で役員報酬を抑えて保険料をコントロールする方法まで、実務で役立つ順に丁寧にまとめました。
情報は公的機関など信頼できる一次情報に基づいています。
まずは結論・まとめ
- iDeCoと小規模企業共済の掛金は、どちらも全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得を直接下げます。結果として所得税+住民税が下がります。[参考情報]
- フリーランス(国民年金第1号)ならiDeCoの上限は月6.8万円(年81.6万円)。会社員(厚生年金の第2号被保険者)になると上限は通常月2.3万円に下がります(企業年金の有無で変動)。[みずほ銀行]
※2027年1月から増額される予定です - 小規模企業共済は月1,000~7万円まで1,000円単位で自由に設定。全額所得控除かつ、受け取り時も有利な課税(退職所得扱いなど)が選べます。[会社設立バイブル]
- 社会保険料の下げ方は制度ごとに違います。
- 国民年金は全国定額(2025年度は月17,510円)。[年金ネット]
- 国民健康保険(国保)は自治体ごとに計算式・料率が異なり、基本は「総所得金額等-基礎控除(43万円)」を基にした所得割+均等割などで算出(= iDeCo等の所得控除は原則反映されない)。[岐阜市公式サイト]
- 法人化すると社会保険(協会けんぽ・厚生年金)が原則強制適用。役員報酬を低く設定すれば標準報酬月額の下限等級となり、保険料を最小化できます(ただし正当な範囲・手続が必要)。[年金ネット]
- 合同会社(LLC)は定款認証不要・登録免許税は最低6万円で設立が比較的簡単。株式会社は定款認証が必要・登録免許税最低15万円。
2027年1月からiDecoの掛金上限額が増額され、加入できる年齢は69歳以下へ変更となります。
フリーランス(個人事業主)の場合、月額68,000円→月額75,000円に上がります。
わたしのようにマイクロ法人を使って節税している場合(厚生年金の第2号被保険者)は月額23,000円→月額62,000円と大幅に上がります。
わたし自身は、現時点でiDeCoが上限の月額23,000円(マイクロ法人を設立しているため)、小規模企業共済も上限の月額70,000円を掛けています。
加えてマイクロ法人を設立して、社会保険料を年間140万円から実質40万円くらいまで下げています(年間100万円くらい安くなる)。このやり方は後半の「法人を作って保険料を抑える戦略」で解説しています。
iDeCoとは?節税になる理由と上限・注意点
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金と運用商品を選び、60歳以降に受け取る私的年金。最大の魅力は次の3点。
- 掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」=課税所得を直接減らす。[税務計算システム]
- 運用益は非課税(通常の特定口座なら課税)。
- 受け取り時も有利:一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除が使えます。[iDeCo公式サイト]
掛金上限(主な例)
- 国民年金・第1号被保険者(=フリーランス等):月6.8万円(年81.6万円)まで。[みずほ銀行]
- 厚生年金・第2号(会社員・役員):企業年金なしなら月2.3万円が上限(企業年金ありなら更に下がる)。[みずほ銀行]
※法人を作って厚生年金に入ると、上限は下がる点に注意。
iDeCoの始め方(手順)
- 加入区分の確認(第1号/第2号/第3号)と上限額の把握。[みずほ銀行]
- 金融機関(運営管理機関)を選び、申込書・本人確認書類等を提出。
- 口座開設後、掛金額と商品(投資信託・定期預金など)を選択。
- 毎年10~11月頃に届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使って確定申告(または年末調整)。
- 住民税は翌年度分に自動反映されます。[iDeCo公式サイト]
小規模企業共済とは?節税・受け取り時の税制
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の役員が退職金を自分で積み立てる制度。特徴は次のとおり。
- 掛金は月1,000~70,000円の範囲で増減可能。掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」に。
[会社設立バイブル] - 受け取り時:廃業・退職時の一括受取は原則「退職所得」扱い、分割なら公的年金等の雑所得扱いで税制面が有利。
[日本公証人連合会] - 申込みは中小機構の取扱窓口(金融機関・商工会議所など)で。
[会社設立バイブル]
わたしは小規模企業共済を上限の月額70,000円掛けています。小規模企業共済は税理士もおすすめする有効な節税手段なので、ぜひ利用して欲しいです。
掛金総額の8~9割を年利1.5%程度で一般貸付として借りられるため、万が一の際の資金としても使えます。
節税効果シミュレーション(iDeCo+小規模企業共済)
前提は次のとおりです。
- フリーランス(第1号)として、iDeCo:月68,000円(年816,000円)、小規模企業共済:月70,000円(年840,000円)をフル活用する
合計控除額=1,656,000円/年 - 基礎控除48万円のみ適用、その他の控除は考慮しない概算
- 所得税の税率表は国税庁No.2260、住民税は10%で計算(お住まいにより若干の加算あり)。[東京税務署]
「課税所得」と「主な適用税率帯」が一目で分かる表
①事業所得(経費控除後) | ②控除前の課税所得 ※1 | ③控除前の主な所得税率帯 | ④控除後の課税所得 ※2 | ⑤控除後の主な所得税率帯 | ⑥概算節税額(所得税+住民税) |
---|---|---|---|---|---|
500万円 | 4,520,000円 | 20% | 2,864,000円 | 10% | 約331,200円 |
600万円 | 5,520,000円 | 20% | 3,864,000円 | 20% | 約496,800円 |
700万円 | 6,520,000円 | 20% | 4,864,000円 | 20% | 約496,800円 |
800万円 | 7,520,000円 | 23% | 5,864,000円 | 20% | 約496,800円 |
900万円 | 8,520,000円 | 23% | 6,864,000円 | 20% | 約496,800円 |
1,000万円 | 9,520,000円 | 33% | 7,864,000円 | 23% | 約546,480円 |
※1 基礎控除48万円を控除する
※2 1,656,000円を控除する
- 表の見方:太字の課税所得(②と④)が、控除前→控除後でどれだけ下がるか、税率帯(③と⑤)がどう変わるかを確認してください。
- 概算節税額は「控除額1,656,000円 ×(控除後の主な所得税率+住民税10%)」の保守的な見積りです。階段式の税率の関係で、実際の節税額は上表よりやや増えるケースもあります(高い税率帯から取り崩すため)。[東京税務署]
重要:法人化して厚生年金(第2号)に加入している場合、iDeCoの上限は原則2.3万円/月となるため、上記と同額の控除は使えません(企業年金の有無でも変動)。ご自身の被保険者区分をまず確認しましょう。
[みずほ銀行]
フリーランスの社会保険料と節税の関係
- 国民年金(老齢基礎年金)
-
- 全国一律の定額
- 2025年度は月17,510円(年210,120円)
- iDeCoや共済の有無に関係なく一定です[年金ネット]
- 夫婦なら2人分支払う(年420,240円)
- 国民健康保険(国保)
住民税(市県民税)は10%が基本。iDeCo・共済の控除は住民税の所得割を直接下げるため、翌年度の住民税が下がるのは確実です。[共済サポート navi]
フリーランスの場合、会社員と比較すると国民年金と国民健康保険の負担が非常に重たくのしかかってきます。
→そのため節税は必須
法人を作って保険料を抑える戦略:役員報酬×標準報酬月額の下限
この方法は誰でも気軽に使える方法ではないですが、わたしも利用している効果的な節税方法なので解説します。
仕組みの要点
- 法人(株式会社・合同会社等)は原則、社会保険の「強制適用事業所」です。従業員がいなくても、法人の事業所は厚生年金の適用になります。[年金ネット]
- 保険料は「標準報酬月額」で決まり、毎年の定時決定や随時改定のルールで見直されます(むやみに増減できません)。[テツニ憲法]
- 標準報酬月額の下限は、健康保険は第1等級58,000円、厚生年金は第1等級88,000円[等級表]。
役員報酬を適正な範囲で低く設定→ 標準報酬が最下位等級となる → 会社・個人の社会保険料が最小化。
※ただしゼロ報酬や不自然な増減はトラブルの元。年金事務所の指導や遡及加入のリスクもあるため、社労士に必ず相談を。[年金ネット]
参考:最下位等級のざっくり目安(個人負担)
- 厚生年金:88,000円 × 9.15% ≒ 8,052円/月(18.3%を会社と折半)。[年金ネット]
- 健康保険:都道府県・組合で料率が異なるため、該当保険者の料率表で要確認(協会けんぽ東京の料率表等を参照)。[協会けんぽ]
iDeCoの上限が下がる点に注意:法人の厚生年金加入(第2号)になると、iDeCoの上限は通常2.3万円/月です。小規模企業共済は継続加入可。全体最適(税×社会保険×将来年金)で設計しましょう。[みずほ]
参考:わたしの実際の社会保険料について
わたしは合同会社を設立していて、自分の役員報酬を45,000円しています。
所得税がかからず社会保険に加入できる最低ラインの役員報酬は月額11,411円〜45,000円のため、自分の役員報酬得を月額45,000円に設定しています。
以下の給与明細を見て頂くと分かるのですが、毎月の役員報酬から天引きされる額が11,387円。年間136,644円になります。

元々わたしは社会保険料として年間140万円ほど支払っていました。法人設立後には、おおよそ125万円ほど社会保険料の支払額を減らすことができています。
ただし会社経営に必要な経費も支払う必要があります。
- バーチャルオフィス(年間2万円くらい)
- 法人としての税金(年間10万円くらい)
- 決算処理(年間2万円くらい)
- その他雑費(年間6万円くらい)
これらがおよそ20万円くらいかかるので、結果として年間105万円ほど社会保険料を減らすことに成功している、ということになります。
そのために会社を設立して決算処理までして…という手間をかける価値があるのか否かは人によると思います。
個人的には法人格を持つというのは意外と便利な場面もあるので(法人向けのサービスが使えるなど)、わたしは当分は社会保険料を減らす目的で会社運営を続ける予定でいます。
合同会社の設立フロー(株式会社との違いも)
合同会社の場合は「取締役」と名乗れない、社会的認知度がまだ低い、などの理由で避ける方も多いです。わたしは節税が目的であったため合同会社を選んでいます。
なお、合同会社で運営していて事業を拡大したいと思ったら株式会社に組織変更することも可能です(それもあって、合同会社にしています)。
合同会社(LLC)の特徴と費用
- 定款認証が不要(公証役場での認証なし)。[法務省]
- 登録免許税:資本金×0.7%(最低6万円)。[法務省]
- 設立に必要な主な書類例:定款(社員全員の記名押印。認証不要)、代表社員就任承諾書、資本金払込の証明など。法務局の様式に沿って申請。[法務局]
株式会社との主な違い(設立コスト視点)
- 株式会社は定款認証が必要(手数料は資本金により1.5万~5万円に段階化)。
- 登録免許税は最低15万円。[日本公証人連合会]
したがって設立費用は概ね「合同会社<株式会社」になりやすい(維持コストやガバナンスは別途検討)。
合同会社・設立のざっくり手順
- 基本事項の決定(商号・本店・事業目的・社員・資本金等)
- 定款作成(認証不要/電子定款なら印紙代も抑制)[法務省]
- 資本金の払込(通帳コピー等で証明)
- 法務局で設立登記(登録免許税の納付)[法務省]
- 年金事務所で社会保険の新規適用届等(会社設立後速やかに)[年金ネット]
- 税務署・自治体へ各種届出(青色申告、源泉所得税、法人設立届など)
会社設立というと難しそうに聞こえますが、しかるべき書類を提出すれば自動的に設立できるので、あっけなく終わります。
個人的に一番大変だったのは年金事務所への届けで、これだけ1カ月くらいかかりました。ただ、年金事務所の方と電話でやり取りしたらスムーズに進んだので、やり方さえ間違えなければ難しくありません。
また、銀行口座の開設も結構面倒です。わたしはネット銀行で口座を開設しましたが、事業の実態を証明するために売上の入金記録の写しを提出しました。既に何らかの収益を上げている実績があればよいのですが、何の実態もない状態だと銀行口座の開設は最初は厳しいかもしれません。
会社設立というと司法書士などに依頼するのでは?と思うかもしれませんが自分でできます。
わたしは「弥生のかんたん会社設立」を利用しました。マネーフォワードも同じようなサービスを提供しています。
これらは、無料で利用できるのですが、なぜ便利な機能が無料なのかというと、会社設立後に会計ソフトを利用してもらいたいためです。
わたしは法人の会計ソフトを弥生にする予定だったため「弥生のかんたん会社設立」を利用しました。ただ、色々あって実際にはマネーフォワードクラウド確定申告を使っています。

まとめ(最短ルートの実行手順)
- いまは個人事業主だけ
- 法人設立も視野
- 社会保険料の理解
-
- 国民年金は定額、国保は自治体ごとで大きく違う。
- 国保は原則、iDeCo等の所得控除では下がらない点に注意
※課税所得は下がるが、国保の基礎は総所得金額等[年金ネット]
- 「まずは個人版:iDeCo+共済」で所得税・住民税を確実に圧縮
- 「次に法人化」で社会保険料の設計
- 最後は事業の利益水準×家計のキャッシュフローで、掛金・役員報酬を微調整する
参考(公的・一次情報)
- 所得税の税率表(国税庁タックスアンサーNo.2260):所得税は7段階の超過累進税率。[東京税務署]
- 住民税の税率(東京都主税局/個人住民税):原則10%(都民税4%+区市町村民税6%)。[共済サポート navi]
- iDeCoの加入区分と上限(厚労省):第1号6.8万円、第2号(企業年金なし)2.3万円ほか。[みずほ銀行]
- iDeCoの控除の取り扱い(国税庁:作成コーナーFAQ/iDeCo公式FAQ):小規模企業共済等掛金控除として申告、住民税は翌年度に反映。[税務計算システム]
- 小規模企業共済(中小機構・METI):掛金全額所得控除、受取時は退職所得/公的年金等控除など。[会社設立バイブル]
- 国民年金の保険料(日本年金機構):2025年度 月17,510円。[年金ネット]
- 国民健康保険の計算方法(例:岐阜市):「旧ただし書き方式」=総所得金額等-基礎控除(43万円)が基礎。[岐阜市公式サイト]
- 社会保険の強制適用(日本年金機構):法人は強制適用事業所。[年金ネット]
- 標準報酬月額/保険料率(年金機構・協会けんぽの料額表):厚生年金は18.3%(会社と折半)、健康保険は都道府県・組合で異なる。[年金ネット]
- 合同会社の設立・費用(法務省/国税庁):定款認証不要、登録免許税は資本金×0.7%(最低6万円)。株式会社は最低15万円。[法務省]
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